<むかご>という食べ物をご存知だろうか?長いもや自然薯の地上部分、つた状にからまる葉の付け根にできる球芽のこと。直径がせいぜい1.5センチくらいの小さな粒で、種みたいな、実みたいなもの。
小さな白い山いも状の粒の周りを濃い茶色の皮が覆っている。熟するとぽろりぽろりと地面に落ちて芽が出てくるのだが、最近の山いもは種芋になる一部を切って植え、そこから大きくする方法をとっているので、<むかご>から芋を育てることはほとんどない。だから山いもの畑を訪ねると、だいたい<むかご>は放置されたままだ。
農家の人たちは、作物である地面の下の山いもを一所懸命に掘らなくてはならないから、お金にならない<むかご>に手をかけている暇がない。植え方や作り方が改良されて、機械の助けですべて手で掘らなくても済むようになったが、それでも60~70センチもある長いもほるのは大変だ。少しだけ手伝わせてもらった私は、情けないことに芋を折った上にぜーぜーと息をきらせた。農家の人はなんと大変な仕事をかるがるとなさるのか、畑に行くといつもリスペクトの心がふつふつと湧いてくる。
なんとかして農業の役に立ちたい、と思うようになった。農家の継ぎ手がいない、とはよく聞くこと。年間で、新たに就農する人よりも国家試験を受けて医者になる人のほうが多いのだそうだ。例えば、私、医者はここ何年もかかっていないけれど、米や野菜は毎日食べる。作り手がいなくなったら、材料がなくなったら、おいしいもまずいも言ってられなくなるじゃないか、心底思う。それでも、暗い気持ちばかりでは先に進めない、明るくいこう、そうも思うのだ。そこで話しは戻って<むかご>。
山芋界(?)にあると思われるヒエラルキーは、自然薯が一番、次が大和芋、それから長芋、という粘り気が判断基準。でもね、周りを見回すと、「山芋をよくすりおろすよ」と言う人はどうも少ないのだ。粘り気に粘り強く執着する人は減っているのじゃないか、そうも思うのだ。
その点<むかご>は、すりおろす手間も手がかゆくなることもなく、塩ゆでや素揚げにすればそのまま食べられるし、米にのせて炊くだけで、むかごごはんというおいしい炊きこみご飯にもなる。もし、存在が認知されて、その簡単な料理法が広まれば流行るのじゃないか、そう思いついたというわけです。
今は捨て置かれているものが農家の人の収入になり、新しい食材が増える、そう思ったらなんだか少しうれしくなって、農業を応援する目的のチームをつくって、暫定的に<チームむかご>と名づけた。まずは<むかご>を本気で仕掛けて世に送り出したい、と目論んでいる。役に立つことを前向きに進めたい。農業を応援する賛同者、募っています!